日本時間の今日の夕方、モスクワに滞在中の小泉元首相の記者会見での発言が大きな波紋を広げています。
主旨としては、
①郵政選挙およびその後造反した議員が復党する際、誓約書で郵政民営化を賛成することまで促して得た2/3であることをわかっていない。
②定額給付金で使う2兆円の税金は、もっと他に使うべきではないのか?
③定額給付金の法案で、参議院と意見(採決)が異なった場合に、(苦労して得た)2/3を使ってでも成立に持ち込むのは少し異議がある。
と、痛烈に麻生政権を批判したわけですが、
④再議決になった場合は、議会を欠席する。
と言ってしまったので、腰砕けではないかとなったわけです。
というのも、本来衆議院の2/3を破るためには、与党議員16人が反対に回ればいいのですが、今回小泉元首相欠席になると、48人が同じように欠席等の造反をしないといけないというふうに敷居が上がってしまうわけです。
さらに、小泉元首相は、この件での根回しもしないということなので、一気に造反(さらに発展すれば、麻生政権崩壊もしくは解散総選挙)の流れも消えてしまったといっても言い過ぎではありません。
この件に関して、与党内でも造反を模索していた議員には少々痛いように感じます。
いくら、麻生政権へのけん制になるとはいえ、造反と欠席(棄権)とでは大きく意味を異なるわけで。
というのも、先述の廃案に持ち込む数の違いというのもありますが、小泉シンパというのがまだまだ少なからずあるわけです。特に小泉チルドレンという郵政選挙で選出された議員は、仮に賛成に回っていた議員の中からでも造反の動きが出た可能性もあったわけで、その重しがなくなってしまったことには、いささか遺憾だと思えてならないわけです。
そして、小泉シンパではなくても、給付金関連で反対を訴えていた(もしくは内々には反対を訴え出たかった)主に中堅・若手議員の反動を摘んでしまったことになり、結局は自民党をぶっ壊すとかつて言っておきながら、今は自民党の結束を図らんとする行動に、自らが議員を辞めるからか、無責任ではないかといぶかしく思えてなりません。
そして野党・民主党側にも手痛いわけです。
もし小泉元首相が率先して麻生政権降ろし、もしくは給付金関連の造反に持ち込んで廃案に追い込めば、一気に解散総選挙に持ち込む地盤ができたわけですし、自民党内の失策を上手くアピールできたかもしれないからです(当然その先には小泉シンパが自民党を文字通り『ぶっ壊す』という前提に立たなければならないのですが)。
ともすれば、一部の自民党議員(主に内々では郵政反対だった議員)と民主党議員が合流して・・・という流れも事実上絶たれてしまったわけで、また自民党を追い詰められなかったという国民の民主党への冷たい視線は避けられなくなるでしょう。
以前ほどの影響力がないとは言え、言えばそれなりに反応を起こす小泉元首相の動きに図らずも期待した国民は、やや失望の念を抱いたばかりでなく、民主党もその動きを頼りにできず、自らで降ろせない歯がゆさを改めて噛みしめられたのではないのでしょうか?
正直言って、2大政党制の大きな弊害が出ているとしか思えません。
ここで本当なら第三極がキャスティングボードを握ってドラスティックに動くべきなのに・・・。昔の日本の政治は(1955年体制で)自民党が強かったとはいえ、多党制の中での監視が行き届いていたのに・・・。