2016年03月22日

「ディアブロ」を巡るエピソード

アメリカで大ヒットを飛ばしたオンラインゲームの一つとして挙げられる「ディアブロ」は、複数プレイヤー参加型オンラインゲームであるMORPGの先駆けとして知られています。ちなみに、日本でもプレイステーション(PS)で発売しているのですが、あまり知られた作品ではなかったとも。PSというハードがオンラインに対応していなかったからというのもあるのでしょうけど、コンシューマーのPSでは作品の特徴であるPK(プレイヤーキリング。相手プレイヤーに危害を加える行為)がウケなかったのではなかったのかとも。


そんな「ディアブロ」制作秘話を事後検証という形で開発者でもあり製作者でもあるデビット・ブレヴィクさんが、アメリカ・カリフォルニアで行われたGame Developers Conference(GDC)で語ってくれました


作品が作られるきっかけになったのは、高校時代。教室の窓から見えるディアブロ山という山を見て、いつかこの名を冠したゲームを作ろうと思ったことからなのだそうな。

その後、一旦就職をしたものの、テキサスに移ってゲームクリエイター仲間を募って会社を立ち上げたのだそう。
しかしながら、一気に「ディアブロ」のようなゲームを作るのは無理だと知っていたブレヴィクさんは、スポーツゲームやライセンスの付いたゲームで日銭を稼ごうと思っていたのだそうです。


ある時、「Justis League Task Force」というゲームをアクレイムに頼まれて製作していたのですが、そのサンプルROMを持って、家電見本市であったConsumer Electronics Show(CES)に行きました。そこで見たのが、クオリティの高い同じゲームのプレイ画面。実は、ブレヴィクさんがアクレイムから頼まれていたのはジェネシス(メガドライブ)版で、彼が見たのはSNES(スーパーファミコン)版だったのです。その開発を担当していたのが、「ディアブロ」を販売することになるシリコン&シナプス社、後のブリザード・エンタテインメント社だったのです。


ブリザード社の開発力に驚愕したブレヴィクさんは、シリコン&シナプス社のブースを訪問。かねてからPCゲームを開発してみたいと思っていたシリコン&シナプス社の思惑と一致し、両社でゲーム開発に乗り出すことになります。しかし、当時RPGはアメリカでは見向きもされなかったジャンルで、どこに行っても相手にされなかったそうです。

ところが、ブリザード・エンタテインメント社が製作した「ウォークラフト」がヒットすると状況が一変ブリザード・エンタテインメント社から「ディアブロ」製作の契約を持ち掛けられることになりました。
ただ、当時ブレヴィクさんが作りたいと思っていた「ディアブロ」はターン制で見下ろし型のシングルプレイ専用のRPGだったとのこと。これが驚くほどあるリアルタイムストラテジーにそっくりでした。そして、開発仲間の中から、リアルタイム制の仕様にしようという動きが挙がったのです。後者に関しては、彼は反対したものの、結局信任投票でターン制にしようとしたのは、ブレヴィクさんのみだったのだそうです。


そして、開発がスタート。ブリザード・エンタテインメント社から時間と予算も増やしてもらい、順調に進んだ・・・かと思いきや、開発が上手くいかないわ、ブリザード・エンタテインメント社からは30万ドルしか開発費があてがわれず、もはや自身の会社が人員整理の窮地にまで追い込まれてしまったものの、新世代機がこの窮地を救うことになります。あの鳴かず飛ばずだった3DOです(笑)。3DOのライセンスに携わっていた3DO社とブリザード・エンタテインメント社との駆け引きを巧みに利用し、多額の開発費を手に入れ、自身の会社もブリザード・エンタテインメント社の傘下に入るという荒業に出たのです。


1996年のクリスマスに間に合わせようと開発されていた「ディアブロ」は1997年(1996年12月31日という見方もある)に日の目を見ることになりました。この作品は最終的には300万本以上(当時のPC市場では異例の数字)まで売り上げることになったものの、その性急な開発のために、PC版はコードとリソース(プログラムと表示文字データ)を分離させなかったため、英語以外のローカライズができなかったそうです。


いやはや、一本のゲーム開発にここまでの労力があったのかと思ったのと、偶然に偶然が重なって、これだけヒットする作品になったのだなと思うと、人の出会いは侮れないものと。「ディアブロ」自身、3作目までリリースされる大ヒット作になっていますし、世界中で遊ばれていますからね。


ちなみに、この「ディアブロ」の海賊版をプレイしていたライターが、当時の行為を謝罪するためにこのレクチャーに来ており、そこでブレヴィクさんに謝罪し、ソフト代を彼に支払うという一幕もあったそうです。


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Posted by alexey_calvanov at 23:02Comments(0)TrackBack(0)