2014年09月18日

運命の時は、もうすぐ

イギリス北部にあるスコットランド。この地域の独立の是非を巡る住民投票が始まりました。
当初は独立なんて夢物語というくらいの圧倒的多数で反対派が占めていました。ところが、8月頃から急速に独立賛成派が猛追し、現状では拮抗状態。わずかに反対派が上回ってはいるというふうではあるものの、態度を決めかねている人が1割いることを考えれば、ひっくり返される可能性は無きにしもあらずというわけです。


イギリスは、イングランド・スコットランド・北アイルランドからなる連合王国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)です。なお、イングランド西部にあるウェールズはイングランドに併合されている経緯があるため、構成地域としてカウントされていません
スコットランドは1707年にイングランドと同君王国として併合されて以来、イギリス発展のために尽くしてきたとも言える立ち位置だったのですけれども、大英帝国とまで言われた栄光が薄れた第2次世界大戦後からスコットランドにおけるイギリスの関係がおかしなものになっていきました。特にサッチャー政権が成立した1980年代には、合理化の名の下で国営の工場が続々と閉鎖され、スコットランドに失業者があふれる結果になりました。

その頃から徐々に地方分権運動が盛んになり、その結果1999年に議会が復活します。そこで躍進したのが、今回独立の機運を高めた張本人であるスコットランド民族党。スコットランド議会で過半数を獲ると、一気に独立の是非を問う住民投票をイギリス政府に要求し、2012年に遂に政府が折れて住民投票の権利を勝ち得ることとなります。


ところで、スコットランドが独立するとどうなるのでしょう
スコットランドの青写真は、高福祉の北欧型社会を目指すこととしており、その財源は北海油田であるとしています。また核兵器を持たない非核保有国を目指すとも宣言しています。

まず北海油田はまだ油田として使えるのかがはっきりしません
イギリス政府は、北海油田の採掘量は先細りしているので、当てにできないとしていますが、スコットランド民族党は(枯渇するとされる)2050年以降でも十分採掘可能と見ています。ただ、この北海油田の収入配分がどうなるかは全く煮詰めていない状況です。

核兵器に関しては、核ミサイルを積んだ潜水艦の基地がスコットランドにあり、それを撤去しようと動いているのですが、他の地域にそれが配備できるかというとさにあらず現状ではかなり困難を極め、もしかしたら無理なのかもしれないとさえ言われています。

経済面でも不安は付きまといます。
スコットランド民族党はイギリスポンドを継続的に使えるとしています。しかし、イギリス政府はそれを認めていません。もし、イギリスポンドが使えないとなると、独自通貨ないしはユーロを使うこととなり、混乱が予想されますイギリス国内も世界の信頼と発言力を失い、一時的に混乱に陥る可能性もあります。
仮にユーロを使いたいとなった場合、EU加盟が絶対条件になります。しかし、スコットランドが新規加盟国扱いになった場合、EU加盟は全会一致の賛成が条件のため、困難を極めることとなるでしょう。同様な民族問題を抱えるスペイン・イタリア・キプロス・ベルギー、そして『宗主国』であるイギリスなどが反対に回る可能性があるからです。

国家元首の扱いも焦点になっています。
スコットランドは同君王国時代よろしく、エリザベス女王を国家元首として定めるとしていますが、当の本人は許しているわけではなく、むしろ独立反対を鮮明にしたため、将来英連邦に加入できるのかさえもわからない状態になっています。スコットランドとしては共和制でも問題ないとはいえ、世界的な信用度合が経済と共に変わってくる可能性があるから、後ろ盾が欲しいのでしょうね。

そして、独立が過半数だった場合、先述の民族問題を抱える国で炎上する恐れがあります。
スペインのバスク・カタルーニャ・ジブラルタル、イタリアの北部とサルデーニャ、フランスのコルシカ、ベルギーのフラマン語地区、デンマークのフェロー諸島とグリーンランド、そしてイギリスの北アイルランドとマン島・・・と西ヨーロッパだけでも思い出せる限りこれだけあります。そこに旧東ヨーロッパとキプロスでの問題が加わります。クロアチアのセルビア人地区とキプロスの北部にある北キプロス・トルコ共和国です。
もちろん、この問題はヨーロッパに留まらず、全世界に広がって行く可能性もあります。日本でも沖縄の独立論が、居酒屋談義レベルとはいえ潜在化している事実があります。決して対岸の火事ではないのです。


この住民投票は日本時間の9/19の6:00(現地時間の22:00)に締め切られ、即日開票を経て公表されます。その公表は早ければ日本時間の昼過ぎ(現地時間の朝早く)。運命の時は刻一刻と迫っています。


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Posted by alexey_calvanov at 23:58Comments(0)TrackBack(0)