「ぼくの漫画には携帯電話がほとんど登場しません」。
そう言い切ったのは、「エルフェンリート」・「極黒のブリュンヒルデ」などでお馴染み、マンガ家の岡本倫さん。ネット上では「倫たん」などと呼ばれることの多い方です。萌え絵な絵柄とは裏腹に、時にスプラッタな表現や先の読めない、読ませない展開などで、熱狂的な読者も多いです。
そんな中、冒頭の発言がツイッター上に出たことで、ちょっとした話題になりました。
岡本さんは、「エルフェンリート」連載前に「みゆき」を読んだ際、500円札が登場したことで、「30年以上(注:連載開始は1980年)経っても色あせないマンガだったのに、昭和のマンガだったんだという現実に引き戻された」と語っています。それゆえに、彼のマンガにはケータイ(ガラケーはもちろん、スマホも含め)がほとんど登場しない、それに追随してメールやLINEのようなアプリも登場しない、さらに家電も登場しない、車を描く際にも古い車種で・・・と徹底的に行っているそうです。それも(連載の)10年後の未来が不確かだからなのと描かれた時代をわからないようにするという配慮でもあるのです。
同様の処置を行っている人として、作家の星新一さんやマンガ家の美内すずえさんが挙がっています。
星さんの場合は、時事的な話題を持ち出さないようにする、美内さんの場合は、作品の小物にはできる限り時代性を出さないようにしているのだそうです。それでも、星さんの作中ではダイヤルを回す表現が出てきたり、美内さんの作中ではケータイが登場するようになりました。それだけ、創作の際に『時代を感じさせるもの』の線引きが難しいと感じさせます。
それ以外にも、流行語も気を付けないといけないと感じている人もいれば、逆に変な制約を付けるのではなく、時代を感じさせることに対して寛容になるべきだと説く人もいたり、ケータイの登場が創作に制約を与えてしまっていると述べる人もいます。
現代を舞台にした作品になると、『現代』というのが常に流れている状況なので、どこでそのラインを止めて軸にするかで、大きく変わってくるんですよね。去年までなかったものが今年になって急に登場することだってままあります。国際情勢だって大きく変わっています。イギリスがEU離脱なんて数年前に話していたらバカにされる事象でしょうね(苦笑)。そんなくらいに、『現代』を描くのは難しいのです。
そう考えると、SFやファンタジーは楽なのかなと思ってしまいますが、そちらはそちらで苦労するんでしょうね。いかにも現代的なものを出してしまうと、古めかしく感じてしまうのはその一例でしょう。うーん難しい。
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