2007年06月28日

ふるさとから遠く離れた場所で何ができるのか?

先日、チリに軟禁状態の日系2世のアルベルト・フジモリ元ペルー大統領が国民新党の推薦で参議院選挙に立候補することになったそうだ。
恐らく彼の現状から見て、比例候補になると思われる。


フジモリ元大統領はペルー生まれの日系2世。両親は熊本出身。近年、ペルーでは大統領になることができないとされている条件のひとつ二重国籍者(ペルー・日本)であったことが明らかになっている。

元々は大学教授で、1990年の大統領選にカンビオ(変革)90という政党を率いて出馬。有力候補を抑えて当選したという経緯がある。
大胆な経済改革で、それまで疲弊していたペルー社会を立て直した実績がある(当時南米ではごく当たり前だったハイパーインフレを抑えた手腕は有名)。

しかしながら、1992年以降独裁化の傾向が強まり、1996-97年の日本大使公邸人質事件を初めとする対極左ゲリラ討伐で一時的に支持を集めたものの、その強権的手腕と身内重視の政治・経済運営が国民の不満を高め、2000年の事実上のクーデター(議会による罷免)で日本に亡命
その後再度大統領選に出馬しようとしてチリに活動の場を移したものの、結局はペルー警察の要請によりチリ国内で逮捕され、大統領選の活動が不可能に。そして先述のとおり、事実上の軟禁状態で活動している。


他国の国家元首だった人が別の国で議員に立候補するということは、恐らく世界の政治の歴史から見ても異例中の異例になると思われる。


この問題で気になるのは、まず日本の政治家として何ができるのかが明確ではないという点

ペルーの国家元首だった経験を生かして、アジアの外交問題(北朝鮮の拉致問題)解決に動くことを公約に掲げるようだが、少なくとも現状の活動の場がチリにあるのにどれだけ日本の現状を知っているのか疑問符が付く
特にこれから問題になるだろう格差社会の問題や年金問題等はどういう政策があるのかが全く見えてきていない


そしてもうひとつは、政治家としてグレーゾーンに立たされている人物を起用した点
いまだにペルーでの政治活動の不透明な部分を認めていないし、真実もいまだ闇の中だ。それに対して何も釈明していないどころか、ペルー国内での裁判も受けていない
また強権的政治手腕が国際社会からの非難を浴びているにもかかわらず、日本での政治活動を始めることを認めるということは、日本の国際社会でのイメージに大きなマイナスになりかねない(日本はフジモリ元大統領のペルーへの身柄引き渡しに同意していない経緯がある)。
なりふり構わずに得票数を増やそうという国民新党の政策がみえみえで、あまり快いものではない。将来的に起用を決めた国民新党の幹部の責任問題にもなるかもしれない


またフジモリ元大統領がいまだ二重国籍者である点も見逃せない。国籍法の改正前に生まれたせいもあるが、少なくとも日本での政治活動を行うことを決めたのであれば、ペルー国籍は捨てる覚悟で挑まなければならないと思われる


個人的な考えだが、フジモリ元大統領は一体どういうビジョンを持って日本の政治家になろうと思ったのかいまいち見えてこない。国民新党のみこしに担がれるような候補者になるのなら、生まれ育ったペルーの政治を担うほうがまだ潔かったのではないのだろうか?
もっとも、グレーゾーンの部分を取り払うことは必須であるが・・・。



Posted by alexey_calvanov at 23:57│Comments(0)TrackBack(0) 真面目なモノ 

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