TXNネットワークのキー局になるテレビ東京が地デジ完全移行の2011年をメドに新局の設置と既存局のエリア拡大をする方針を明らかにしました。
完全新局としての立ち上げは宮城と広島。
完全新局/既存局のエリア拡大なのか不明なのが静岡(既存局のエリア拡大の場合、テレビ愛知のエリア拡大で対応)。
既存局のエリア拡大はテレビ大阪で、対象地域は京都・兵庫(一部報道では京都市と神戸市周辺)。
現状、TXNネットワークは北海道・関東圏・愛知・大阪・岡山/香川・福岡の6局と非常に限られた地域でしかネットされてなく、他の民放ネット局(※)と比べてもかなり小さいネットワークです。
そうなった背景として、日本経済新聞単体またはメインだったことがあげられ、また当時(テレビ大阪以降)の設立目的が経済ニュースの報道だったためではないかと思われます。
しかしながら、最近ではポケモン、おはスタを中心としたアニメ・子供向け番組や「開運!なんでも鑑定団」を初めとするバラエティ、そしてシニア層に絶大な人気のある「いい旅・夢気分」のような旅番組と、TXNネットワークのない地域でも放送されているいくつかの優良なコンテンツを抱えていたりします。
またBSジャパンの開局も追い風になっているのでしょう。いつでも好きな時に手軽にTXNネットワークの番組を見たいという要望が地方で高まってきているのもうなずけます。
しかしながら問題もいくつかあるわけで。
完全新局の場合は、既存局の4局と地元経済界の同意を得られるかどうか。
実は名古屋の開局の時、日本経済新聞社だけでは開設のメドが立たず、やむなく中日新聞社といった地元経済界の同意を急遽取り付けたという苦い経緯がありました。こういう状況に陥った場合、宮城では河北新報社、広島であれば中国新聞社の出方がカギになるでしょう。
静岡の場合、どこまでテレビ愛知でフォローするかの問題が出てきます。
それが浜松までなのか静岡市までなのか、はたまた県全体になるのかという問題です。伊豆など最東部は、どちらかというと関東圏のつながりが深いため、テレビ東京をネットしてほしいという要望が増えるかもしれません。
また、仮に新局立ち上げになった場合、日本経済新聞社との合弁の主導権を巡って、地元の静岡新聞社が握るのか名古屋の中日新聞社が握るのかで争いになり、開局遅延・妨げの原因になるかもしれません。
そして一番難航しそうなのがテレビ大阪のエリア拡大。京都・兵庫だけのエリア拡大でも、KBS京都とサンテレビとの間で大きな争いになる可能性があります。特にKBS京都の場合、制限は加えられているもののTXNネットワークの番組をネットしているので、その番組の扱いが大きな問題になるでしょう。
そして、この拡大が、元々テレビ大阪の開設時の目標だった、関西圏全体になった場合、関西圏の独立U局全体に大きな影響を与えかねません。というのも、滋賀のびわ湖放送、奈良の奈良テレビ、和歌山のテレビ和歌山は一部TXNネットワークの番組を買っているため、番組運営に大きな穴が開きかねないということと、局間競争になった場合、体力の少ない独立U局は経営が傾きかねないからです。
個人的な意見を上げるとすれば、多チャンネルを進めることに反対はしません。
むしろうちの地域にもネットされていない放送局を・・・という気運が高まって、新局ラッシュになれば、局のあるなしによる格差が減っていいことだと思います。
しかし、乱発したせいで一部の放送局の運営に立ち行きがいかなくなったでは本末転倒です。
立てたいと思うからには、中長期的なシナリオを描かないといけません。特に人口低下に進んでいる現在、これ以上局を設置することにメリットがあるのか、局のエリア拡大が他の局にどう影響を及ぼすのかを総務省は鑑みてほしいものです。
そして独立U局はそろそろ一致団結して既存局との差別化を図らないと埋没してしまう可能性があります。
関東圏ではTOKYO MXとテレビ神奈川・テレ玉・チバテレビとの主導権争いがありますが、それは他のネット局に有利に働くだけで、地元局には何も利益ををもたらさないと思います。
ちなみに、私が思うに、TXNネットワークの流せる率の高い地域はTXNネットワークメインの放送局に鞍替えしたほうが安定した運営ができると思います。そして入ったことで必ずしも独立U局製作の番組を流せないということはないのですから、空いた時間を独立U局のネットに積極的に当てたり、不人気のTXNネットワークの番組と差し替えたりして流していけばいいと思います。
もちろん、TXNネットワークもゴールデンでの自社製作枠を拡充する努力をしてもらいたいものです。
ただ、根本的に2011年の地デジ完全移行ができない限り、この話も絵空事になるわけで・・・。国もできるできないを今年中にアナウンスしないと大変なことになると思います。