2020年08月21日

31年前のあの頃を思い出す


こちら先日、東ヨーロッパにあるベラルーシのルカシェンコ大統領が、首都ミンスクにあるトラクター工場で演説した時の映像自身が何の不正も無く大統領選挙に勝ったことを訴えたものの、従業員は「ウソだ!」「辞めちまえ!」といった罵声で返しているというもの。最後にルカシェンコ大統領は半ばブチ切れ気味に「(演説を最後まで聞いてくれて)ありがとう。さあ皆さんどうぞ。辞めてしまえと言ってもらって構わないから!」と述べ、壇上を降りるのですが、その時を待ってましたとばかりに皆罵声を浴びせるのだから、よほど酷かったんでしょうね。
なお、この動画には収められておりません(テレビ朝日のニュース動画には収録されている)けど、その後罵声を浴びせた人に「殴らないから言ってみろ」と挑発するのですから、ある意味肝が据わってる


しかし、私はNHKでこの動画(ニュース映像)を見たのですけど、今回の件、31年前にルーマニアで起こったあの映像を思い出すのです。



1989年に起こったルーマニア革命の引き金になったチャウシェスク大統領(当時)の演説。いわゆる官製集会なのですけど、途中ルーマニア革命のきっかけになったティミショアラの暴動に抗議する人達が爆弾を爆発させたとも10代の子供が爆竹を炸裂させただの詳細は不明なものの、実行犯を警察が射殺した言われている事態が起こりパニック状態になります。その時動揺するチャウシェスク大統領の姿が、今回の姿とオーバーラップするのです。
なお、演説そのものは何とか滞りなく終わらせることができたものの、国営テレビが動揺する大統領の姿を映してしまったこと、あまつさえパニック状態になった時に中断したことで、体制が制御できなくなったと判断した国民が、大規模な抗議集会を開くきっかけになったのです。


さて、ベラルーシという国は、1991年に旧ソ連の崩壊と共に独立を果たすものの、旧ソ連の構成国と同じく独立後の大混乱に差し掛かってしまいます。その時に出てきたのが、ルカシェンコ大統領で、1994年に当選以降、民主的な選挙を経ている(ただし、不正選挙の可能性が濃厚)とはいえ、四半世紀以上独裁政権を維持しており、『ヨーロッパ最後の独裁国家』とも言われています。
そして、今年大統領選挙が行われ、対抗馬に民主化運動を率いた活動家の妻(夫は立候補を表明したものの、国から資格停止処分を食らって出馬不可になった)との争いになったものの、約8割の支持を集めて当選したと報じられました。しかし、対抗馬側は不正を主張(実際その不正と思しき録音テープが最近挙がっている)し、呼応した国民が抗議の印として、白・赤・白の独立当初の国旗(現在の国旗は旧白ロシア・ソビエト共和国時代に倣ったものになっており、赤と緑に加え、竿側に赤と白の装飾が施されたものになっている)を掲げています

現在は、まだ特段大きな動きは出ていないものの、欧米諸国は制裁の方向に進んでいます。国内では労働者がストライキを起こしており、国営メディアも同じくストライキを踏んでいるため、リトアニアに事実上亡命した対抗馬と残った国民の連携および動静を見極めている状態の軍がどう動くかに掛かっているでしょう。特に軍が動けば、ルカシェンコ大統領の退陣は避けられない事態となるかもしれません。状況によっては、ルーマニア革命のようなドラスティックな展開になるかもしれません。

ただ、ロシアがルカシェンコ大統領を支持しており、彼が窮地に立たされた場合、軍を派遣してベラルーシ併合に走る可能性もあります。というのも、ベラルーシとロシアが共同国家としてやっていこうと動いた経緯がある(人種的にもロシア人とベラルーシ人はほぼ同じとされる)、ウクライナのクリミア半島での実績、最近になってロシアの野党指導者(民主活動家)に毒が盛られる事態が発生していることを勘案すると、そう至ってしまいかねないのです。


できることなら民主化が上手くいき、対抗馬の訴える「大統領就任後半年以内の公正な選挙」を実現できるよう願います。それまでは一枚岩になって反ルカシェンコを訴えない限り、握りつぶされてしまうことでしょう。また国際社会もロシアの干渉をできる限り排除できるように協調していくべきだとも思います。


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Posted by alexey_calvanov at 23:59│Comments(0) 真面目なモノ 

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