ガイナックスとは、鳥取県西部ないしは島根県東部の方言である『がいな』から来ています。『がいな』とは『大きい・すごい』を意味しています。サッカーJ3のガイナーレ鳥取と語源は同じですね(こちらも『がいな』から来ている)。そこに『未知』を意味する『X』を付け加えて、『GAINAX』となったわけです。つまり、『大きな未知(の可能性を持った会社)』という意味になっていくのでしょうね。
ガイナックスは、1984年にデビュー作である「王立宇宙軍 オネアミスの翼」を製作するために設立されました。岡田斗司夫さんなどが、別の製作会社から独立して作られた格好となります。
その後、1988年の「トップをねらえ!」、1989年の「ふしぎの海のナディア」がヒットしたものの、資金繰りは苦しく、常に負債を抱えている状況になっていました。この頃は、ゲーム開発も行っており、かの有名な「電脳学園」や「プリンセスメーカー」もガイナックス製作なんですね。なお、ゲーム制作は1990年代半ばまで行われます。
そして、1995年に「新世紀エヴァンゲリオン」が大ヒットします。しかしながら、製作委員会方式で作られたこの作品に出資していなかったため、得られた収益がわずかとなり、再び経営危機を迎えます。この時は、エヴァンゲリオン関連商品の窓口を製作委員会からガイナックスに移したため、事なきを得ますが、このことで放漫経営の原因になったのではないかと当時の社員だった庵野秀明さんは述べているそうです。
エヴァンゲリオンがヒットした後も、エヴァンゲリオンコンテンツの活用(パチンコゲーム化など)や「フリクリ」・「天元突破グレンラガン」などのヒットでそれなりの収益を得ていたものの、所得隠しによる脱税事件をきっかけに経営が悪化していきます。脱税事件が起こった際には、阿武さん自身が旗頭になって経営改革を行うとしたものの、社内に改革の雰囲気が醸造されず、遂にはカラーを設立(2006年)して退社(2007年)してしまいます。この際、エヴァンゲリオン関係の権利がカラーに移行します。先述のようにヒット作が出ても、不祥事や放漫経営に嫌気がさした社員が次々と独立していきました。「天元突破グレンラガン」を作ったスタッフが設立したトリガーがそれにあたります。
2011年以降はヒット作に恵まれず、2012年頃から経営が悪化し始めます。ガイナックスは庵野さんの作品に対して使用料をカラーに支払っていたのですけれども、その支払いが滞り始めた時から、阿武さんの作品や資料などを勝手に売却したり、社員を強制解雇したりと横暴を極めることになります。貸付金を巡って、カラーとは訴訟騒ぎになり、結果的にカラーへ貸付金を支払うこととなります。
ガイナックスが揺れ動いていたこの時から、ガイナックスの名を冠した地方子会社が相次いで設立されました。米子ガイナックスをきっかけに、福島ガイナックス(現在のガイナ)・GAINAX WEST・ガイナックス新潟・GAINAX京都がその時設立されました。しかし、現在は全てガイナックスとは無関係になっています。
ガイナックスは2016年頃からアニメ制作とは畑違いになる関係者を経営に迎え、2018年には社長に就任することになるのですが、翌年に準わいせつ事件を起こし、逮捕される事態を起こしてしまいます。さらに翌年から、社外から役員を派遣し、これまでの放漫経営をはじめとする会社の諸改革を行うことになったものの、負債額が多額・権利関係が散在してしまったこともあり、結果的に上手くいかず、今回の破産劇となったわけです。
一つの時代が終わった・・・と思ってたけど、メインの作品はほとんど他の会社に移ってしまっているんですね。もう死に体の中で会社だけが生き残っていたというふうだったんですなぁ。いつ亡くなってもおかしくない中で、翌10年以上会社が持っていたと思うと、案外居座り続けていた経営陣は有能だったのか。いや、過去ヒットしたコンテンツが有能だっただけかもしれない・・・。
まだガイナックスが持っている作品の権利譲渡は、今後発表とのことなので、まだまだガイナックスを巡る話題は尽きないことでしょう。負債総額もわかっていないので、一体いくらだったのかも気になるところです。

