2017年11月16日

アフリカ最強の独裁国家が変わるかもしれない

アフリカ南部にある内陸国ジンバブエ。国名は「石の家」という意味があり、実際にその石の家であるグレート・ジンバブエという古代遺跡(世界遺産)も有名です。
その国を治める独裁者ロバート・ムガベ大統領が軍主導のクーデターで追い込まれたということで、その一報を知った時、思わず「おっ」とうなったものです。彼が死ぬまで権力を手放さないだろうなぁと思ってたからです。


このジンバブエという国は、悲惨な経歴をたどった国でもあります。


元々は外国(中国産の陶器が見つかっている)とも貿易を行えるほどの王国が栄えていたものの、ヨーロッパの侵略をきっかけに分裂状態になり、最終的にはイギリスの支配下に置かれます。支配下に置かれたのが19世紀半ば頃。資産家のセシル・ローズが作った会社が買い取った場所なので、ローデシアと呼ばれるようになります。現在のザンビアが北ローデシア、ジンバブエが南ローデシアとなるわけです。
第1次世界大戦後(1923年)にローデシアは南北に分かれ、単独の自治領となるのですが、第2次世界大戦後(1958年)、ニヤサランド(現在のマラウィ)と北ローデシアと一緒になった連邦自治領になります。ところが、程なくして、「アフリカの年」と言われた1960年の独立ラッシュに触発されて、ニヤサランドと北ローデシアが分離を求めて離脱(1963年)1964年にニヤサランドと北ローデシアは独立を果たします。特に北ローデシアは東京オリンピック開会式の時には北ローデシアだったのに、閉会式にはザンビアになっていたというエピソードでも有名です。そして、一人取り残された南ローデシアは、ローデシア共和国として独立することになります。

と、ここまでは白人主導の植民地運営の話。でも、ローデシア共和国になっても白人主導の国家なのは変わらず、南アフリカ同様アパルトヘイト(人種隔離政策)を行い、黒人は徹底的に弾圧されたのです。それができたのも、周囲にはまだ『支持者』がいたからなわけで(南アフリカを始め、ベチュアナランド(現在のボツワナ)、ポルトガル領モザンビークなど白人主体の地域が多かった)
しかし、周辺地域が独立を果たすことで風向きが変わり始め、黒人弾圧を行うローデシアにも南アフリカ同様に国際社会からの強い非難を浴び、政権交代を目指す黒人勢力のゲリラ戦も激しくなってきて、白人政権側も疲弊した経済を立て直すことができず1979年に黒人に参政権を与えることを決めたものの、さらなる譲歩を求めた黒人側に押し切られ、1980年に遂に黒人政権による独立を果たします。ちなみに、この頃、ムガベはゲリラを起こすなどして活動していました。

独立後、ムガベは首相として就任1987年には大統領に就任し、以降現在までその座を譲っていません


独立当初は、豊かな農業国として有名で、白人の残した技術により、その恩恵を享受していました。その白人も技術者として残る人がほとんどで、非常に融和的だったとも言われていました。
ところが、2000年代から白人に対する差別的な政策(きっかけは白人が所有する農場の強制徴収)により、経済が崩壊ジンバブエドルのハイパーインフレを引き起こす結果になりました。白人がほぼいなくなったため、農業も壊滅的になり、途端に食糧不足を巻き起こしました
当然ながら、その政策に批判的な勢力が登場したものの、かつての白人政権が行った時のように徹底的に弾圧。それでも抑えきれなくなったため、野党との連立で譲歩したものの、相変わらずムガベ大統領の強引な政治運営が続き、93歳になった今でも君臨し続けているのです。

それでも、ムガベ大統領にも老いと衰えが目立ち始め、来年の大統領選挙には出馬できるかいぶかしい状態になったようです。そこで後継者レースとなるわけですが、その後継者に目されていた第1副大統領を解任して、自分の奥さんを後継者に据えようとする動きを見せたのです。それに怒った軍がクーデターを起こした・・・というのが今回の顛末なわけです。


つまりは、独立前は白人政権が黒人を蹂躙し、独立後は(よかった時期はあったものの)ムガベ大統領が国民を蹂躙するという恵まれない歴史をたどっているんですね。


このムガベ大統領の変質は、今の奥さんと結婚してからという説もあるんですよね。実はムガベ大統領は昔の奥さんとは死別しており、その心の隙に入ったのが今の奥さんらしいのです。この奥さんが悪妻で、ムガベ大統領の無茶苦茶な政策は今の奥さんのせいだという説もあるのです。


にしても、第1副大統領が後任であっても、奥さんが後任であっても、ムガベ大統領率いる与党の政権であることは変わらない軍事政権になってもそれほど変わらないのかもしれません。ここはいっそのこと野党に政権を担わせて様子を見るのが一番だと思います。それか軍事政権が担うのならば、そのもとで速やかに選挙を行ってどちらが政権を担わすのにふさわしいか決めるべきなのかと。アフリカ連合の出番なのですが、同じようなことをやられたら困る国もあるので、躊躇するんでしょうねぇ・・・。となると、ヨーロッパか最大の貿易国である中国なんだろうけど、後者は全く期待が持てない(苦笑)。こういうところで、日本が一肌脱げば違うんだけど、こういったことには一切無視だからねぇ。


100兆ジンバブエドル ケース付き 紙幣
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Posted by alexey_calvanov at 23:21Comments(0)

2015年06月17日

ジンバブエドルってまだあったんだ

その昔、世界史の授業で習った人は多いと思いますが、第1次世界大戦後のドイツで、急激なインフレが起こったことで、当時の通貨だったレンテンマルクが急激にはね上がり、遂には1兆にまでなったレンテンマルクをデノミネーション(デノミ。通貨切り下げ)しなければならなくなった・・・なんてことを習ったことでしょう。その時の写真で、旧レンテンマルクを積み木遊びの材料にしたり、紙くず同然になってしまった100億レンテンマルク紙幣なんてのが掲載されていて、ああこんなことが起こらなくてよかったな・・・と思った人もいらっしゃるかもしれません。
その後、日本でも戦後すぐにハイパーインフレに巻き込まれたこともありますし、1980年代には主に南米諸国でハイパーインフレが起こり、旧レンテンマルクと同じような事態が起こっています。

そして、2000年代にハイパーインフレに巻き込まれたのが、アフリカ南部にあるジンバブエ1980年にイギリスから独立して以降、ムガベ大統領(独立当時は首相)の長期独裁政権が続いており、民主的な国家とは程遠いと揶揄されることもあります。


そんなハイパーインフレが起こったジンバブエは、元々農業国で非常に豊かな国でした。イギリスが持ち込んだ農業システムが上手く機能していたからです。ムガベ大統領も当初はこのシステムを維持していたものの、2000年代に白人が支配人になっている土地を接収し黒人達に分け与えたあたりから徐々にシステムが維持できなくなり、最終的には崩壊することとなりました。
当然ながら経済システムにも大きな影響を与える結果になり、経済も崩壊。遂にはジンバブエドルが急激にインフレを起こすこととなったのです。
インフレ真っ盛りの頃には、100兆ジンバブエドルというレンテンマルクも真っ青な紙幣が登場し、買い物をするにも札束が舞う事態になってしまいました。


もうにっちもさっちもいかなくなったジンバブエ政府は奇策に打って出ます。何とジンバブエドルの流通を停止し、アメリカドルと南アフリカの通貨ランドなど9種類のみを流通させるとしたのです。それにより、インフレに関しては現在非常に落ち着いたものになっているそうです。
確か、ジンバブエドルの流通停止は2009年頃だったと思うのですが、その時に廃止にしていなかったのね(苦笑)。それゆえに、今回廃止するという事態に至ったのは、私個人の意見としては「遅ぇーよ」という感じです。


ちなみに、流通停止後もアメリカドルとの交換は行われていたようで、1アメリカドル=3京5000兆ジンバブエドルという、やはりハイパーインフレは止まってなかったのかと思ってしまうほどの呆れた為替レートを叩き出していました。


このジンバブエドルは9月までに回収するということもあり、アマゾンやヤフオクなどで100兆ジンバブエドルが複数登場価格もハイパーインフレ状態(笑)。まさか最後の最後までインフレに悩ませることになろうとは・・・。
まぁ、現地でも紙くず同然なのをいいことにアートの材料にしてしまってるとのことだし、いずれ落ち付くに違いない。

ただ、アメリカドルや南アフリカランドをそのままにしておく策は大丈夫なの?という人もいらっしゃるかもしれません。この状態になると、独自の経済政策は打てなくなるのですが、国家経済を安定させることのできるメリットはあるとのこと。アメリカや南アフリカの国家情勢だけを心配すればいいので、その間に国の経済を立て直せばいいのですから、気楽なものです。実際、一部の国では独自通貨を設けないか並立させる形で、規模の大きい国の通貨に依存するスタイルを採っています。


そういえば、この事態になってから小銭が足りないというふうになって、お釣りが飴玉になっているなんてテレビでやってましたけど、アメリカドルがメインになると、飴玉が飛び交う事態になってしまわないか心配ですわ(苦笑)。


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Posted by alexey_calvanov at 23:39Comments(0)TrackBack(0)