2021年07月29日

あの順番が意味するもの

連日熱戦が繰り広げられる東京オリンピックですが、話を開会式にまで戻しましょう。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などのゲームミュージックが流れていたあの時にです。


入場行進の際、オリンピック発祥の地であるギリシャを最初に、難民選手団を2番目、2028年に開催するアメリカを204番目、2024年に開催するフランスを205番目、そして開催国日本を最後とする以外は、日本語のあいうえお順となっていました。
そこでクローズアップされたのが、台湾オリンピックでは、チャイニーズタイペイという名で、公式ではチェコの後・チャドの前に入場することになっていました。ところが、実際には韓国(大韓民国)の後・タジキスタンの前に入場していたのです。そう、チャイニーズタイペイは台湾(東京オリンピック組織委員会は台北(タイペイ))として入場していたのです。
ちなみに、1964年の東京オリンピックではオリンピック発祥の地であるギリシャと開催国の日本以外はアルファベット順で入場したのですが、台湾は当時は中華民国(Taiwan 中華民国)という扱いになっていました。一方の中華人民共和国は不参加でした。


これは戦後の中国の歴史が絡んできます。


太平洋戦争で日本軍を破った中国は、戦後再び国民党と共産党との国共内戦に突入していました。そして共産党が中国全土を掌握し、中華人民共和国を建国国民党は日本から奪還した台湾に逃れ、そこで中華民国を維持しました。
当時の国際社会は、中国全土を掌握した中華人民共和国が共産主義国家だったため、ソビエト連邦(東側諸国)が承認。一方で台湾を領有した中華民国をアメリカ(西側諸国)が承認していました。しかし、国連は事実上アメリカ側に立ち、中華民国を承認していたのです。

ところが、1971年に成立した通称「アルバニア決議」において、中華民国は国連の代表権を中華人民共和国に譲渡させられることになり、同時にオリンピックの場でも中華民国脱退の動きがみられたものの、最終的に中華人民共和国が折れ、1984年のサラエボ冬季オリンピックから、現在の名称での参加となりました。なお、台湾(中華民国)のチャイニーズタイペイでの復帰と中華人民共和国としての復帰は1979年の名古屋で開催されたIOC総会で決まったそうです。


今回、NHKが名称紹介の際に『台湾』と表したことで、台湾メディアは好意的な反応、中国政府は否定的な反応を示していました。個人的には、台湾としても何の問題も無いと思ってますけど、中華人民共和国にとっては、中国全土を治めているという意地とプライドがあるのでしょうね。一方で台湾は、自分達のアイデンティティを認めてくれたという意識があるのでしょう。最近は中華人民共和国の攻勢で台湾は追い込まれ気味でしたし。


今後も2つの中国が維持される状況が、この先も続くと思われますから、この問題は解決には至らず、いつまでも先延ばしとなるでしょう。しかし、中華人民共和国の現状を見るにつけ、この問題の解決を中華人民共和国が強硬的に進めてしまわないか心配でもあります。


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Posted by alexey_calvanov at 23:25Comments(0)

2016年04月24日

いえいえ、役所が崩壊したことは問題ですよ、中国の皆様

国民性の違いでは解決できないなと痛感。


先日の熊本地震では、役所が倒壊するなどし、復旧への妨げになっているケースがあり問題になっていますけれども、それに対し、中国のネット上では逆に称賛する動きがあるのです。
これは、中国のツイッターにあたる微博(ウェイボー)と同じくLINEにあたる微信(ウェイシン)で起こっているもので、日本の新聞などの記事が翻訳されて転載されているそうなのですけれども、庁舎の耐震性に問題があるとわかっていても学校の校舎の耐震性改善を優先させたり、被災者が子供の命を優先しているという答えを紹介したことで、それを読んだユーザーが「学校が壊れず役所が壊れるのは、社会が成熟している証拠」と称賛。さらに「(自国の)役所の建物が最も豪華なのとは大違い」と国の指導者批判とも取れる書き込みもありました。


そこまで書かれる理由は、ただ一つ。2008年に起こった四川大地震です。
あの時、街の中にあった学校の校舎が倒壊し、多くの子供が亡くなったため、校舎の手抜き工事が大きな社会問題になり、国に補償を求める動きも活発化しましたが、抑え込まれた経緯があります。


確かに、役人憎しで役所が潰れたことに対し、ざまぁ感が増したのではないかと思うのでしょうけど、役所が潰れるということは、その後の復旧に大きな影響を与えるのは否めないわけです。
まず、罹災(りさい)証明書が発行できないため、被害に遭った建物があっても、それに対する補償が算定できず、結果的に住民の生活復旧が遅れてしまうのです。そして、生活保護を受けていた人にとっては、その支給も滞ることになり、生活に支障が出ることになるでしょう。あまつさえ、その後の様々な復旧に対して迅速に動けないばかりか、役所に蓄積されたデータを引っ張り出すこともできなくなり、結果的には町のリスタートに大きな影響を与えることになるのです。


人の命も大切ですが、やはり生き残った人達の安全を保障することはもっと大切なのだということを中国の人達にはわかってほしいものです。それこそより成熟した社会に繋がるのです。そして、憎むべきなのは、堅牢に作られた役所なのではなく、そこに資金を回そうとしなかった役人に対し行うべきなのです。堅牢な建物は、その後の復旧に重要で、そこを拠点に救援物資などの搬入・搬出や生き残った人達へのサポートに使えるのですから。


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Posted by alexey_calvanov at 22:00Comments(0)TrackBack(0)