正式名称は、「アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険」で、1979年~1980年にNHK総合テレビで放送されました。丁度、「未来少年コナン」の放送から1年経った頃ですね。
原作は、タイトルにもなっているマルコ・ポーロの口述から生まれた「東方見聞録」です。最後、マルコ・ポーロがゼロ戦で討ち死にして、主人公がお母さんと叫びながら終わるアレか(ニヤニヤ)。<それは、「東方見文録」という主人公の名前から採ったファミコンソフト!
・・・と、冗談はさておき、この作品はNHKで放送されたものなのですが、長年NHKでも全43話中、最初と最後しか残っていなかったといういわくつきの作品でした。というのも、当時テープがかなり貴重で、何回も重ね録りをしながら使っていたんですね。そのため、再放送をしたくともできなかったという経緯があったので、NHKアーカイブスを介して、当時の録画フィルムを募集していました。
結果的にマスターフィルムは見付かったものの、イタリア語版の収録のために日本語の音声などを抜いたものでした。それでも、視聴者からまだ高価だったビデオデッキで録画したVHSテープなどが寄贈され、これで揃った・・・かと思ったら、第30話の録画だけが残されていなかったため、コンプリートできないまま時は流れていきました。しかし、音声だけを収録していた方がいたことで、無事第30話の音声が収録されたことで、全話完パケとなり、今回デジタルリマスターでの再放送となったわけです。既にBS4Kでの放送は行われていたものの、今回早朝((土)5:10~5:38)ながら総合テレビでの放送が行われています。
あらすじはこう(以下PCではイタリック体で表記)。
時は13世紀のベネチア(ベニス)。15年の長い旅を終えた父と叔父が帰ってきた。しかし、主人公であるマルコ・ポーロは複雑な思いを持って見ていた。父は物心付いた頃には旅に出ていたので顔すら覚えていない。それでも当初は父の東方での話を楽しみにしていたものの、母が亡くなったことで段々と父に対しての恨みや反発が頭の中をもたげていった。
その思いが爆発し、父とのいさかいが起こった中で、父は息子のためを思い、次の冒険には彼を連れて行こうと決心を固める。マルコも叔母の話を聞き、決心を固め、ベネチアから東方への冒険に出るのだった。
というふう。
まず見てびっくりするのは、いきなり始まる実写シーン。そう、この作品は今でも珍しい実写とアニメの融合で物語を進めていくんですね。ともすれば、進行の妨げになりかねない展開ですけれども、上手く融合させていますね。作中に挟み込まれる実写は、主に登場人物の紹介や当時の時代背景を説明する説明パートのような作りになっていました。
初回のアニメパートは、主人公と父親の間にある大きな溝が軸となっていましたけど、どうやってそのわだかまりを埋めていったのかのディティールがわかりにくかったのが残念なくらいで、作品そのものは、丁寧に描かれていたのではないかと思います。特に父が持つ息子への思いは、何ともやるせないものを感じました。それをわからせるために暴力で返さざるを得ないというのが、何ともやるせないとまた思わせるんですよ・・・。『現在では配慮すべき表現』と4:3の映像のためにできた黒枠の左側に書かれていたのですけど、まぁ確かに、殴り飛ばす・引っぱたくだけではなく、胸ぐら掴んで投げ飛ばすのは、今じゃ絶対にアウトだわな(汗)。そもそも「東方見聞録」で、この表現が出てくるのか(苦笑)?
今後は、マルコが旅を通じて様々な経験をすることとなるのでしょうけど、私達も彼の成長期を見ながらその思いを追体験できるのではないのかなと思います。そして、そこで彩られる実写パート、現在ではとても貴重なシーンもいっぱいあるので、資料的映像として見ることとなるでしょう。撮影が1978年だそうなので、まだイスラム革命の起こる前のパフレヴィー朝のイランの姿、旧ソ連の侵攻前に誕生した共産主義政権時代のアフガニスタンの姿が見られるという点だけでも貴重なのに、今や破壊された遺跡も当時の映像で見られるので、これまた貴重なものとなりそうです。

