2017年02月15日

正男、死す

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の最高指導者である金正恩第1書記の異母兄で、金正日総書記の息子である金正男(キム・ジョンナム)氏マレーシアのクアラルンプール国際空港で何者かにより殺害されました。


金正男氏は、金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男ということで、後継者レースの筆頭に付いていたのですが、偽装パスポートで日本に入国しようとしたのがバレたことで、金総書記の怒りを買い、候補者レースから脱落したと言われています。また父親である金総書記に反抗的だったからという説もあり、かつ父親に性格などが似ていることから三男の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の方が金正日総書記のお気に入りだったという説もあります。

候補者レースから外れた後は、家族と共に中国の保護下に置かれたとされており、張成沢(チャン・ソンテク)氏の後ろ盾もあったとされています。しかし、張氏は2013年に処刑され、北朝鮮での政治的影響力はほとんどないとされていました。ただ、金正恩氏が最高指導者に就任したことで、元々不仲だったこともあって、かねてから暗殺説が飛び交っており、それを恐れた金正男氏は、マカオを拠点としながらもオーストリアなどヨーロッパ諸国やシンガポールなどを移動していたとも言われています。
そして、2/14にマレーシアからマカオに戻る途中に女性2人組により毒殺(毒針を刺されたとも毒物を巻かれて口を塞がれたとも言われており、情報が錯綜している)されました。


まず、なぜ殺されたのかというのが大きな疑問になっていることでしょう。
政治的な影響力はほとんどない、後ろ盾である張氏は既に殺されているとはいえ、彼の発言力や行動力は金第1書記には脅威であるとされました。また、北朝鮮の体制(一族3代にわたる最高指導者の襲名)に批判的だったり、中国の改革開放路線に舵を切るように再三述べていたことも、現状維持を是としていた金第1書記と相反しているとも言えます。また先述の通り、不仲だったので殺したということも考えられるでしょう。
もう一つ考えられるのは、国内の幹部への統制目的で殺したという見方です。最近では最高クラスの外交官が韓国へ亡命したという事態もあったり、金正男氏自身も韓国への亡命を試みようとする話が伝わっていたりと、北朝鮮の足元が揺らぎかねない事態が相次いでいましたこれ以上の体制の揺らぎを避けるために手を打ったとも言えるわけです。
それに絡んで、私自身は金第1書記の幹部が、得点稼ぎでやってしまったのではないかという推測もしています。目の上のたんこぶである金正男氏を殺してしまえば、金第1書記に取り入れられるのではないかということで、暗殺に動いたというふうにも考えられるのです。金第1書記の命令が無いとできないという見方もあるものの、不仲説が事実であれば、それが無くともGOサインが出ていたと思います。


そして誰が殺したのかというのは、北朝鮮の工作員であることは間違いないでしょう。過去に飛行機を爆破したり、スパイ活動を行ったりしていることから、彼らの犯行は明白です。監視カメラに映り捕まった女性以外にも男性2人などが周りにいたということから、5・6人くらいの体制で動いたのではないかと思われます。


金正男氏は、かなり気さくで見識が深い人ではありましたが、北朝鮮に何らかの関わりのある以上、ご冥福・・・とは言えないですわね。ただ後継者レースから外れた後は、哀れな人生だったと思います。国に帰りたくても帰れない、帰れたとしても安心して過ごせない、あまつさえ関係の無い家族も巻き込まれているわけですから、できる限り家族は守ってあげてほしいと後ろ盾をしているとされる中国には求めたいものです。


少なくとも、北朝鮮の終わりの始まりが来ているとも感じられますし、金正男氏を擁護していた中国がどう動くのかが今後の情勢の大きなキーとなるでしょう。


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Posted by alexey_calvanov at 23:59Comments(0)TrackBack(0)