この東栄町、奥三河の医療の砦でもある東栄医療センター(旧東栄病院)があります。中でも人工透析は1987年から開始され、山間部の貴重な医療拠点になっていました。
ところが、昨年にその人工透析が廃止され、これまで当院で受けていた患者は車で1時間弱掛る静岡県浜松市まで通わないといけなくなったとのこと。今まで車でも数分~数十分以内だったのが、倍以上になったため、患者の負担は相当大きく、透析を受ける前に体調を崩さないか心配になる(そのため高速道路も一部通っているものの、危ないため下道しか走れない。その下道も崖のそばを走るので相当危険)という話もありました。
そこで、透析患者を中心に、東栄医療センターでの人工透析復活を求める嘆願書を提出したものの、町長はコスト面から受け入れられないと拒否したのです。そこで、人工透析の廃止と入院病床を無くした町長解任のリコール運動を起こすことになりました。
さて、今回大変だと思ったのは、2点。
最初は、何と言っても新型コロナウイルスの影響。3密(3つの蜜。密閉・密集・密接)を避ける活動をしないといけないため、事前集会などが開催できない中での運動。戸別訪問でもかなり気を使って活動されたことと思います。東栄町では新型コロナウイルスの感染者がほとんど出ていないとはいえ、このリコール運動で感染爆発でも起ころうものなら、医療施設の話どころではないわけです。
もう一つは、大村秀章知事リコールの偽装署名問題。この問題で住民もかなり疑心暗鬼に陥っていたようで、自分の署名方法に問題無いか確認を取っていた人もいたのだとか。全く、余計なことをしやがったわ、あの運動に参加した人達は・・・。
この2つの障害があった中でも、969筆の賛成を集め、うち956筆が有効(過半数は908筆)と判断されました。まだ異議申し立てという最後の門番が控えているものの、ほぼ確実にクリアしたとも言えるでしょう。早ければ、今年の夏に町長解職に対する住民投票が行われ、賛成が過半数を占めれば、町長は解任され、町長選挙となります。
この問題は、へき地医療の在り方を問う事態でもあり、同様の悩みを抱えている自治体でも今回のような運動が起こる可能性もあります。全てリコールで解決できるかというと、それほど甘くは無いと言えるでしょうけど、少なくともへき地に住む人達が安心して生活できるように自治体・都道府県・国はサポートできるようにするべきだとは思います。市町村に必ず1つとは言いません。拠点となる市町村に一定の施設を持つ病院を置くべきだと思うのです。今回その役割がたまたま東栄町だったと言えるわけで、コスト面・医師の確保で苦労するのかもしれませんが、何とかしてサポートしてあげてほしいものです。
今後、この事態がどう動いていくのか、注視していきたいと思います。

