2021年12月13日

南の島で何が起こったのか

南太平洋に浮かぶニューカレドニア。オーストラリアの北東に位置し、オセアニアの中のメラネシアに属しています
ニューカレドニアは1774年にクックによって発見され、1853年にフランス領となり、当初は流刑地として機能していたものの、19世紀後半にニッケル鉱山が発見されて以降はフランスの重要な拠点となりました。その後は、フランスの軍事拠点として重要度が増し、近年は観光業も盛んになっています2008年にニューカレドニアのサンゴ礁(バリアリーフ)が世界遺産になったことも追い風になっています。

しかし、元々はメラネシア系の住民が5万年前にやって来ており、フランスの支配が行われる前は、メラネシア系の後からやって来たポリネシア系の民族との混血(カナック)が大勢住んでいたのです。


第2次世界大戦後以降、フランスからの独立運動が盛んになります。当初はフランス人(白人)から差別されてきたカナック達の文化の復権が主となったものの、フランス側が拒絶したため過激化死者もたくさん出て、ニューカレドニア全土に非常事態宣言が出されるほどになりました。
様々な状況を経て、ようやくフランス政府は、1998年にカナック(独立派)達とヌーメア協定を締結ニューカレドニアの自治と市民権を与え、独自の旗を掲げることも許可されました。そして、3度にわたって独立の是非を問う住民投票を行うことが決められたのです。

これまで2018年と2020年に行われたものの、1回目・2回目共に独立反対が多数を占める格好となりました(1回目は56.40%、2回目は53.3%)。この間にも政権の中で独立派が支持を伸ばし始め、今年7月には3月に起こったニッケル事業売却を端に発して崩壊した政権に代わる新政権を選ぶ議会内選挙で、独立派の政権が誕生することとなりました。


そんな中で先日3回目の住民投票が行われました最後になる住民投票は、独立派が新型コロナウイルスの感染拡大のため準備ができていないとしてボイコットを行ったこともあり、投票率が43.90%と大幅下落(過去2回の投票率は8割を超えていたとされる)したものの、独立反対は過去最高の96.49%を獲得することになりました。


今回の一件を受けて、フランス政府は歓迎とフランス領(海外領土化)の維持は決まったものと受け止められていますが、独立派は先述の理由で結果を受け入れないとし、再び争いの種にならないか心配なところです。


仮にニューカレドニアが独立にかじを切った場合、それはそれで大変なことになっていたと思われます。
まずフランス政府が手を引くことになるので、資金面で苦しくなる可能性があります。ニッケル鉱山があるとはいえ、そのノウハウをフランス人(白人)が握っていた場合、資本も引いてしまう可能性があるからです。また、その資本を引き継ぐ名目で中国が進出してくる可能性があります。中国は軍事面でも強化を図ろうとするでしょうから、地域内に軍事基地を設ける可能性もあります。そうなるとニューカレドニアから近いオーストラリアにとっては脅威となるでしょう。

逆に独立しない道を選ぶとなると、他のオセアニアの地域にも影響を与えるかもしれません。
現在独立を考えている地域がいくつかあり、その中の一つに、最終的にはソロモン諸島への復帰を考えているブーゲンビルがあります。
ブーゲンビルは地政学的にはソロモン諸島の一部とされているものの、列強の統治の中でブーゲンビル島はドイツ領に、ソロモン諸島はイギリス領となりました。後にブーゲンビル島はオーストラリアの委任統治領に組み込まれ、パプアニューギニアとして独立します。この島もニューカレドニア同様に銅鉱山が島の経済のウエイトを占めているものの、本土に搾取される格好となったため、民族的な違いもあり、独立運動が盛んになったのです。
2019年に独立の是非を問う住民投票で結果賛成多数だったことを受け、自治・独立に向けて動き出したものの、ニューカレドニアで海外領土の維持が打ち出されたという事態になれば、パプアニューギニア政府の態度が硬化しして、最高でも自治権までしか得られない可能性もあります。他にもニュージーランドとの自由連合を目指すトケラウも、その流れがとん挫する可能性もあります。


民族の自立というのは、原則として認められるべき案件だとは思います。ただ、今回の住民投票を認めるのは、少々厳しいのではないかと思われます。何せ4割近い人達がボイコットしているのは、少し考えた方がいいと思うのです。そこでフランス政府は、してやったりと独立不可は不可侵とするのではなく、もう一度体制を整えたうえで、住民投票を行うべきではないのでしょうか。いずれにしても2022年に行うのを最後としていたのですから。


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Posted by alexey_calvanov at 23:58Comments(0)